高校生ものづくりコンテスト 優勝の秘訣を探れ!

2021年度 第21回全国大会レポート in神奈川県

高校生がモノづくりの技術を競って日本一を決める「第21回 高校生ものづくりコンテスト全国大会」が昨年11月に行われました〜。取材班は全8部門のうち、自動車整備部門など5つの競技が実施された神奈川県立東部総合職業技術校へ。そして、聞いてきちゃいましたよ、優勝者と審査員の先生に優勝するための秘訣を!これを読めば、次の大会で必ず優勝できる!…かも??

超絶テクを持った猛者、集う!
 前回大会は新型コロナウイルス感染症の影響により中止となったために2年ぶりの開催となった「高校生ものづくりコンテスト(以下、ものコン。主催は全国工業高等学校長協会)」。
 競技は自動車整備、旋盤作業、電気工事、電子回路組立、木材加工、化学分析、測量、溶接の全8部門。それぞれ制限時間内に課題作品を完成させ、技術力や作品の出来栄えなどで、各部門の日本一を決定します。
 11月14日、会場に足を踏み入れると空気が張り詰めておりました。それもそのはず、全国大会に出場できるのは、県大会を勝ち抜き、さらには全国9つのブロック大会で優勝したチャンピオンと開催県(今回は神奈川県)の代表者のみ。全国から超絶テクを持った選手たちが集まる、まさに工業高校生にとっての甲子園なのです。

審査員に突撃取材!
 午前9時に競技はスタート。制限時間は各部門によって異なりますが、それぞれ2〜3時間の間に課題作品を完成させなくてはなりません。中には制限時間内に終えられなかった選手が出るなど、なかなかハードな課題なんです。
 そして、審査結果が出た頃合いを見計って、各部門の審査員に突撃取材を敢行しました!教えてください、ものコンで優勝する秘訣を!!そして、さらには優勝者にもいろんな質問をぶつけてみました!


石垣 樹乃さん
三重県立四日市工業高校

各課題の作業時間が20分しかないため、作業を始める前に時間配分や作業順序を頭の中で組み立てました。そして、最後に落ち着いて作業ができるように、最初から最大のスピードで動くことを心がけました。また、大会で使用される工具の状態がわからなかったので、日頃からいろいろな工具を使って練習してきたことも勝因だったと思います。大会に向けて平日の放課後は課題ごとに練習し、休日は模擬練習で苦手な部分を修正。そうした積み重ねによって、自分の力をしっかり発揮できたのではないかと思います。ただ、競技中の動画をあとで確認してみると、重要な部分でのミスもあり、「まだまだだなぁ」という思いを持っています。これからも技術、技能の習得を頑張りたいです!

神奈川県立平塚工科高校
菅野 忠一先生

(副)課題作成・競技運営統括責任者

優勝した石垣さんは競技がスタートしてすぐにメモを取り、効率よく進めるための段取りを行なってから作業に取りかかっていました。それが印象的でした。課題を最初に把握し、作業の流れを組み立ててから着手したことで、車のまわりをグルグルまわるといった無駄な動きがなく、ほとんどの課題で余裕を持って取り組んでいました。この競技はお客様の車を扱うことを前提にしています。そのため、ドアの閉め方や乗車するときには帽子を脱ぐといったマナーも監督者は見ています。今後、出場される選手はそんなところにも気を配れるといいと思います。自動車整備の競技会は各自動車メーカーでも行っています。高校生のうちからこうした大会に出場することは優勝できなかったとしても自信になります。なので、今後もいろんな生徒さんに出場して欲しいですね。


茅木 春風さん
広島県立広島工業高

優勝できると思っていなかったので、嬉しさよりも驚きのほうが強かったです。普段から安全作業の徹底、基礎基本の反復練習を行い、弱点を洗い出しては、そこをつぶすようにしてきました。競技中は「焦らず、慌てず、諦めず」を心がけ、ミスがあっても諦めなかったたことで、結果的に寸法を間違えることなく仕上げることができました。それが優勝につながったのではないかと思っています。
ものコンにチャレンジしたことで自分の作業に自信が持てるようになりました。それと同時に全国の代表の作業を見て、視野が広がり、もっと努力しなければならないと感じています。

神奈川県立平塚工科高校
渡邉 茂樹先生

課題作成・競技運営統括責任者

1〜3位が僅差で、一般の方が見てもわからないような加工精度や安全作業における小さなミスが勝敗を分けました。大会を振り返ると、早く作業をしようと焦ってしまう選手が多かったように思います。けれども、制限時間を目一杯使って、どう効率よく、精度の高い作業をするかという部分が実は大切です。早く動きながらも頭の中で次に何をするのか考えながら作業をすると、物理的に早く動かなくても効率よく作業が行えることがあります。そうした部分に気をつけられると上位を狙えるようになるのではないでしょうか。出場選手たちは毎日のように練習を重ねてきたと思います。その積み重ねが結果として表れます。今後、出場を考えている生徒さんはどんどんチャレンジして、失敗を重ねながら、一つ一つの技術を確実に身につけて欲しいと思います。


山本 咲さん
神奈川県立向の岡工業高校

競技中は時間内に完成させることを意識し、落ち着いて日頃の練習通りに作品をつくることを心がけました。優勝できたのは、成長を求めて努力を継続できたことと、モチベーションを維持できるように指導してくださった先生との出会いが大きかったと思います。普段の練習では、平日は計画的に無駄なく練習ができるように予定を立てて部分的な練習を行い、休日は競技全体を通しで練習しました。また、練習で見つかった課題を解決することも繰り返しました。ものコンを通じて、すごい人がたくさんいることを知り、自分も頑張らなくてはいけないと気づかされました。とても大変でしたが、挑戦してよかったです。

神奈川県立川崎工科高校
栗田 敏夫先生
課題作成・競技運営統括責任者

本来なら3時間近くはかかる課題内容を2時間でやらなくてはいけないため、時間をどう節約するのか、それがポイントだったと思います。例えば、工具を持ち替える際のタイムロスをなくすために同じ動作の作業をなるべく一度に終わらせるなどの工夫が大切です。電気工事部門は力や身長に結果が左右されやすい競技です。背が低かったり、力が弱かったりする選手は一連の作業を何度も練習して、そのハンデを埋める努力が必要です。優勝した山本さんは女性ですが、そうした努力に加え、かなりていねいに作業していたことが高得点につながりました。2位とは僅差でしたが、そのていねいさが勝敗を分けたのではないかと感じます。この競技に出場する生徒さんは、まずは第2種電気工事士の資格取得に向けた勉強と練習をきちんと行うことが優勝への近道です!


稲田 颯汰さん
愛媛県立松山工業高校

競技終了後は自信がなかったので、優勝と知って驚きました。競技前には「自分ならできる!」と自分自身に言い聞かせて、競技中は平常心を心がけて、まわりのことを気にせずに集中して作業をしました。
先生からは優勝後、お祝いの言葉とともに「これまで努力してきた過程が重要。その過程で培った人間性や協調性が社会に出てから重要になる」という言葉をいただきました。実際、練習では本番を意識して後輩と競いながら練習をするなど、さまざまな人の協力があったから、全国大会で優勝という目標に向かって進んで来られたと感じています。ものコンへの参加を通じて、仲間や支えてくれる人の大切さを学びました。

神奈川県立神奈川工業高校(定時制)
教頭 及川 博伸先生

事務局長

この競技はプログラミング、組み立て技術、入力回路の設計、その3つが大きな判定要素になり、とりわけ、プログラミングで大きく差がつきます。今回も上位の選手はプログラミングの得点が高い傾向にありました。また、組み立て技術も大切で、はんだづけが正確にできているかどうかで差が出ます。はんだづけは限られた時間内でいかに正確に、ていねいに作業できるかがポイントですね。また、優勝を狙うためには時間配分も重要です。プログラミングには時間がかかるので、その時間を確保するために、そのほかの作業をできるだけスムーズに行うことが大切です。
これからチャレンジする生徒さんは、どんな問題が出るのかを想定しながら、ベースとなる技術をしっかり勉強、訓練して、一つ一つの力を身につけていってください。


松本 航希さん
新潟県立新津工業高校

1年生のときから、ものコンの全国大会で優勝することを目標にしてきました。これまで悔しい思いもしてきたので、結果を聞いたときにはホッとし、嬉しさが込み上げてきました。競技中はまわりの選手は気にせずに、自分の作業に集中すること、また練習ではやらなかったことは本番でも絶対にやらないと決めて挑みました。普段の練習では、本番のつもりで誰かに見られていると意識をしながら行っていたことが、練習通りの力を発揮できたことにつながったのではないかと思います。
ものコンへの出場を通じて、夢に向かって突き進むことで夢が実現できることを学んだので、これからも大きな夢を持って突き進んでいきたいです!

神奈川県立藤沢工科高校
大西 堅司先生

課題作成・競技運営統括責任者

ただつくるのではなく、つくった作品が売り物になるかどうか。そうした視点を持って取り組むことが、この競技で上位を狙うには大切です。今大会の上位3名の作品は、まさに商品として扱えるような高いレベルでした。例えば、部材と部材のつなぎ目などの仕上がりがとてもきれいで、特にかんながけは、3名とも削った面が光っていて、一目でゆがんでいないことがわかります。これは普段から道具の手入れを心がけ、その道具をいかに上手に使いこなすのかを考え、実践している表れだと思います。
木材加工の技術は人々の生活を支える、世の中にとって欠かせないものです。そして、いい仕事をすると「ありがとう」という言葉をもらえます。だから、より多くの生徒さんにこの競技に参加してもらい、木材加工の楽しさを体験してくれると嬉しいですね。


優勝するためのポイントは?
 優勝の秘訣、少しはつかめましたか?優勝選手や審査員の話を聞くと、どの競技も時間との勝負ようです。限られた時間の中で、最高のパフォーマンスを発揮するには練習の積み重ねはもちろん、タイムロスを減らす工夫も欠かせません。
 例えば、ビスを60本打つとします。1本のビスを打つ時間を1秒縮められたら、合計60秒の時間が稼げます。1秒という「短い」時間も、2〜3時間の競技の中で繰り返されることで「長い」時間に。
 では、1秒縮めるためにはどうすればいいのか。それは気合だ!ということではなく(笑)、ビスを持つ手の位置やビスの向きを揃えるなど、そんな工夫で改善されたりします。
 さて、そんなわけで次回のものコン、優勝するのは…キミかもしれない!!

文=阿部 伸/写真=高永 三津子