高校生の発想で新ビジネスが誕生する!?
「ロボットアイデア甲子園」 第1回 開催決定!スペシャル対談
産業用ロボットの新しい活用アイデアを競う「ロボットアイデア甲子園」。昨年、関東のみでプレ大会が行われましたが、今年は全国大会が開催されることに。審査員長の佐藤知正東大名誉教授と主催のFA・ロボットシステムインテグレータ協会を代表して協会幹事の天野眞也さんに、どんな大会なのか聞いてみました。
【左】FA・ロボットシステムインテグレータ協会 天野 眞也幹事(ロボコム株式会社 代表取締役社長)【右】審査員長 佐藤 知正先生(東京大学名誉教授)
―昨年の大会では「そのアイデア買った!」と審査員席から声が挙がるなど、盛り上がったそうですね。
天野:この大会は最先端の製造現場で使われているロボットに触れられたり、審査員には企業の代表が参加していたりと、実社会やビジネスの世界と近い場所で学びが得られる特徴があります。だからこそ、会場にいた社長たちから「そのアイデアを買いたい!」と声も挙がり、盛り上がりました。
佐藤:昨年、優勝した静岡県立科学技術高校の長谷さんのアイデアはトラックにロボットアームを搭載するというもの。こうすることで工場と工場を結ぶ道路も製造ラインの一部として考えられるのではないか。そんな誰も思いつかなかったアイデアを聞いて、審査員たちはみんな驚いていましたね。
―優勝を狙うには、やっぱりロボットに詳しくないとダメですよね?
天野:そんなことはありません。皆さん、TikTokの仕組みを知らなくても、それを使って遊んでいますよね。ユーチューバーだって、YouTubeの仕組みを分かっていなくてもお金を稼いでいます。技術的な理屈を知らなくてもビジネスはできるんです。それと同じで、ロボットのことを詳しく知らなくても、この大会では十分に優勝を狙えます。
佐藤:今の高校生は物心がついたときからパソコンやインターネットが身近にあります。そんな世代だからひらめくアイデアは必ずあります。以前、大学の教え子に学力が非常に優秀な学生がいました。ところが、その学生がある日、言うんです。「僕はこれから何をやっていけばいいんでしょう」と。愕然としました。好きなものがないと、いくら学校の勉強ができても社会に出るときにつまづいてしまいますし、好きという気持ちがないと何かを生み出すこともできません。ですから、モノづくりの楽しさを知る工業高校生ならではのアイデアに期待しています。
天野:大事なのは「こうすると、こんなことができるんじゃないか?」という自由な発想。というのも、産業用ロボットをつくるロボットSIer という仕事は、「このセンサーとこのカメラとこのハンドを組み合わせて、こんな製品をつくろう」というふうに、世の中にある技術や装置を組み合わせて価値を生み出す仕事です。ゼロから何かを開発する仕事ではないんです。この大会も世の中にある技術や装置をどう組み合わせて価値を生み出すのかを競うものなので、自由な発想でチャレンジしてください。
佐藤:むしろ、何も知らなくてもいいんですよ。もしも優勝できなくて悔しかったら、何が自分に足りなかったのかを考えて、そこで勉強をすればいい。だから、まずはチャレンジして欲しいですね。
―大会に参加するとどんなイイコトがありますか?
天野:参加者は全員、見学会を通じて最先端の産業用ロボットに触れることができます。AIを搭載したロボットが器用に箱詰めをしたり、何かを組み立てたりする姿は見ているだけでも面白いですよ。
見学会で利用されるロボットセンターのひとつ、栃木県小山市にある「スマート・ファクトリー・コンダクター・ラボ」の様子
佐藤:産業用ロボットはアメリカで特許が取得され、その後、日本の企業が実際に使用して、問題点を改善して…ということを繰り返し、実用化しました。そんな経緯から産業用ロボットの大メーカーが日本に集中して存在しています。実は、日本は産業用ロボット大国なんです。そうした日本の産業界の強みを肌身で知ることはいい学びになると思います。
天野:強みを知るのは就職先や進学先を選ぶ際にも役立ちますよ。産業用ロボットの市場は年々、拡大しています。人手不足の課題解決だけでなく、モノづくりを高品質化し、生産性を挙げるためにも注目されているんです。大きな波がまさに起き始めている今、この業界に触れることに損はありません。
佐藤:20世紀が自動車の時代なら、21世紀は町のいたる所にロボットがあるような「ロボットの時代」になると思っています。だから、産業用ロボットの将来性に心配はありません。あとは皆さんがこの世界にチャレンジするかどうか。今後も続いていく大会なので、少しでも興味があれば、是非とも参加してください。
ロボットアイデア甲子園は次世代を担う若者に産業用ロボットへの理解を深めてもらうことを目的に企画された大会です。主催はFA・ロボットシステムインテグレータ協会。
〈vol.8 秋号(2019年10月発行)より〉