モノづくりにたずさわる方の給料が安いっておかしくないですか? 衆議院議員の岡本三成さんにインタビュ〜♪

今年は衆議院選挙が行われる年。「ま、選挙なんて関係ないや」なんて思っている人、いませんか?実は高校生の生活も政治と深い関わりがあるんです。というワケで、専門高校の設備刷新などの取り組みを行っている衆議院議員の岡本三成さんに、選挙のことを聞きつつも、ぶっちゃけ、工業高校ってどう?と質問をぶつけてみました!

〈vol.14 夏号(2021年7月発行)より〉


国会議員の仕事ってナ〜ニ??

ーー政治に対する不満がいっぱいあるので、今日は朝まで語り合いましょう!…と言いつつも、実は政治ってよくわからないし、高校生にとってはあまり関係のない世界のようにも思うんです…。

 いえいえ。実は、政治は皆さんの生活と直結しているんですよ!国会議員の仕事って何をやることだと思いますか?

 いろいろあるのですが、もっとも大切な仕事は2つ。法律をつくることと予算を決めること。法律は世の中のルールです。予算は国民の皆さんが納めた税金の使い道です。究極のことろ、この2つが国会議員にとって大切な仕事なんです。


選挙には行ったほうがいいですか??

ーー税金といえば、高校生も消費税を払いますよね。でも、やっぱり政治って身近なものには感じない…。

 私が最近、関わった法律の改正に、あおり運転の厳罰化があります。実はこれまで、あおり運転というのは法律上の定義がなかったんです。なので、スピード違反などの理由で捕まえるしかありませんでした。でも、ゆっくり走っていても危険があれば、被害にあった方は取り締まって欲しいと思いますよね。なので、わざと相手の運転を妨害するような危険な運転行為全般を「あおり運転」と定義づけし、罪を重くしました。車の法律は皆さんの生活にも関わってくる問題です。また、高校生といえば、5年前に選挙権が18歳に引き下げられました。これだって法律が変わったからなんです。

ーーなんか、関わりがあるような…気がしてきたような…。

 予算についても最近では、工業高校をはじめとした専門高校の設備を新しくするように政府に要望し、必要経費274億円の予算を確保しました。これによって、老朽化した設備を最新の機器などに買い換えることがしやすくなったんです。

ーー学校の設備も政治が関わっているんですね!そうなると、選挙って行ったほうがいいんですか?

 絶対に行ったほうがいいですよ!行かないなんて、もったいない!でも、投票は義務ではなく権利。だから、行くか行かないかは自由なんです。ただ、法律や予算を決められる国会議員は皆さんの代弁者です。「この人とは価値観が似ているな」という候補者に投票することで、自分の意見が国づくりに反映されます。価値観の合わない誰かに日本の未来、自分の将来を託すなんて嫌じゃありませんか?そういう意味で選挙に参加することは大切なんです。


日本人は世界でトップクラス。でも、給料は安い!?

ーー岡本さんはどうして政治家を目指したんですか?

 私は9年前までアメリカの証券会社で働いていました。2001年9月11日にアメリカ同時多発テロという事件が起きたとき、現場にいたんです。窓越しに飛行機が目の前を通り過ぎ、直後に高層ビルに衝突しました。罪もない何千人もの方が亡くなる光景を目の当たりにして、たった一度の人生なら誰かの役に立つことをしようと思ったんです。

 もう1つは、アメリカ人や中国人、ドイツ人、いろんな国の方々と仕事をしてきましたが、日本人は考える力、勤勉さ、協調性、どれをとっても世界トップクラスだと感じました。それにも関わらず、大工さんや製造業の技術屋さん、パン屋さん、農家の方。同じ仕事をしているのに日本人の給料が先進国では一番安い。

 例えば、建設現場で働いている方の給料を比べても、アメリカでは日本よりも1.5倍以上稼いでいる方が多くいるんです。どの職種もこうした傾向があります。日本人がつくる建物や工業製品はクオリティが高いのに、おかしいじゃないですか。これは働いている人の問題ではなく、経済の土俵をつくる政治のあり方に原因があるんじゃないか。そう思い、日本人が努力に見合った収入を得られるようにしようと政治家を目指しました。

ーー政治の力で収入って増やせるんですか??

 例えば、公共事業における建設従事者への国が支払う賃金、いわゆる労務単価を上げるように働きかけをしていて、実際に私が初当選してからの9年間、毎年、上がり、9年前と比べて合計で50%以上高くなりました。公共事業にたずさわる人たちの収入を上げることで、建設業界全体の収入が底上げされる効果が期待できます。

 もう1つ、政治が変えられるものが最低賃金です。これは働いた人に対して払わなければならない賃金の最低額のことで、違反すれば罰せられます。これを引き上げることで、低所得の方に加えて、中間所得層の方も含めて、真っ当に働いている人たちの平均年収を全体的に上げていきたいと思っています。

 近年は気候変動で毎年のように集中豪雨が起きていますよね。水害などを防ぐ工事を行う際、最大の問題はなんだと思いますか?それは工事を請け負う人がいなくなってしまうことなんです。どんなにお金があっても素人では工事はできません。また、日本はモノづくりが強い国で製造業界が経済の一端をになっています。

 若い人たちが建設業や製造業といったモノづくりの分野に魅力を感じてもらえるように平均年収を上げていかなければならないし、そのことが災害から国民を守ることとなり、日本の未来を明るくすることにつながると思っています。


チャンスが舞い込んでくる方法とは??

ーーお給料は高いほうが嬉しいですね〜。ところで、工業高校などの設備を充実させる活動をどうして始めたんですか?

 もともと父親が小さな建設会社を営んでいて、高校生の頃には現場を手伝っていたこともありました。そんな関係から建設や土木建築に対する関心が昔からあったんです。そうした中、建設業界の方々とお話をする機会がありました。そのとき、若い方が就職しても「こんなこともできないのか」と上司に言われて辞めてしまうケースがあると聞きました。また、高校の実習などで使っている機器が古くて、学んだことが実社会でほとんど役に立っていないという声も聞きました。

 そこで群馬県の8つの工業高校で設備に関する調査を行ったんです。その結果、例えば、測量機器の状況については、「まったく使えない」が20%、「一部不具合・故障があるけど、使っている」が33.5%でした。つまり50%以上の学校で何かしらの問題があったんです。こうした状況は測量機器に限らず、しかも全国的に同じであることが分かりました。

 今、あらゆる産業界でデジタル化が進んでいます。その業界で働きたいと思っている若い方たちが工業高校に入学してみたら、デジタルの進歩が目覚ましいこの時代に30年も前の設備で学んでいたり、そもそも設備に問題があったりして、卒業すると「こんなこともできないのか」と言われてしまう。こんな仕打ちってあるでしょうか。

 工業高校での学びは、確実に日本の将来を支えることと直結します。だからこそ、工業高校を卒業したら、「今の若い奴はこんな技術を持っているのか!」と現場で言ってもらえるようにしたい。少なくとも、そういうことが学べる環境を整えなくてはいけない、そう思ったのがきっかけでした。

ーー岡本さんは工業高校生にどんなことを期待していますか?

 期待だなんて偉そうなことは言えませんが、私も学ぶ環境や働く環境がもっとよくなるように努力するので、よりよい未来を信じて、皆さんと一緒に前進できたら嬉しいですね。

 私はアメリカの大学で理事を務めていたことがあるのですが、そのとき、学生に向けていつも言っていたのは、「Don’t underestimate yourself/あなた自身を過小評価するな」という言葉です。外国人って「これ、できる?」と聞くと、全然できないのに「できます!」と答える人が多いんです(笑)。いっぽう、日本人はそこそこできるのに「できません」という人が多い。だから、あまり遠慮しすぎると「あ、本当にできないんだな」と思われてしまいます。

 日本の若者は高い潜在能力を持っているので、「私に任せてください!」というと、チャンスが舞い込んでくることがよくあります。傲慢になってはいけないけれど、勢いだけでも許されるのが若さの特権です。特に工業高校で技能を学んだ方たちはプロフェッショナルとして社会から大きな評価を得られるべき存在です。だから、自分を過小評価するなんて、こんなもったいないことはないので、思い切っていろいろなことにチャレンジして欲しいですね。

岡本 三成(おかもと みつなり) 1965年生まれ。創価大学を卒業後、シティバンクに入社。米国ケロッグ経営大学院で経営学修士号(MBA)を取得したのち、ゴールドマン・サックス証券にて勤務。2005年、同社の執行役員に就任。2012年、公明党の公認で衆議院議員に初当選(現在3期目)

岡本三成 公式ホームページ

取材・文/阿部 伸