色のコト いろいろ探ってみました!教えて!東洋インキさん!!

スマホの画面の色もインキなの!? どうして電線の色は黒いの??

身のまわりにあるさまざまな製品の色。実はそのほとんどは意図や理由があって色づけされています。そこで印刷インキメーカーとして世界シェア第3位を誇る東洋インキの社長特命担当・近藤雅彦さんに、知られざる色の世界についてうかがいました!それにしても<こんどう・まさひこ>さんって、どこかで聞いたことある名前だなぁ…。黒柳さ〜ん!

実はいろんなモノに色をつけています
近藤さんはこれまでいろんな企業の製品の「色」に関する仕事に携わってきました。それこそ誰もが知っているあんな商品やこんな製品まで。
「インキというと紙に文字を書いたり、印刷したりする材料と思われがちですが、実際にはそれだけではありません。若い頃、先輩からよく言われたのが空気以外ならなんでも色がつけられるということ。つまり、それだけ身のまわりのさまざまな製品にインキやそれにまつわる技術が使われているんです」
空気以外だなんて、大げさだなぁ (´ε`) ほんとにそんなにたくさんの製品に使われているんですか❓
「はい。プラスチック製品、食品パッケージ、自動車のボディ、壁紙や床材といった建装材など、人工的に着色されたさまざまな製品にインキは関わっています」
へぇ〜。本や雑誌の印刷だけじゃないんですね。とはいっても、空気以外だなんて、やっぱり大げさですよ(´ε`)
「じゃあ、例えば、電信柱に張られた電線、あれも着色しているって知ってましたか❓」
え、あんなモノまで⁉️

電線が黒い色のワケ
「電線を覆っている被覆にはカーボンブラックという顔料を混ぜていて、あえて黒色に着色しているんです」
あれはあえてなんですか。ということは、カラフルな色にしてもいいわけですよね❓ギンギラギンにさりげない感じで。
「技術的には可能です。ただ、電線は景観を損ねないように目立たない色にする必要があります。また、カーボンブラックは安価ということもあります。そして、何よりも太陽の紫外線や気温の変化から電線を守るためにあの色にしているんです。というのも、実はカーボンブラックには紫外線や熱を吸収する機能があり、そうした性質を利用して電線を保護しています。もしも、保護する機能がない顔料などを使えば、電線はすぐに劣化してしまいます」
テキトーに黒くしているワケじゃないんですね。
「インキや顔料は色をつけるためだけではなく、機能性という点も重要な要素なんです」
色と機能性に関係があるなんてこと、今まで考えもしませんでした。なんだか鼻から牛乳が出るくらいビックリしちゃいました。
「牛乳といえば、牛乳の品質保持にもインキの力が関わっているんですよ❗️」
ええっ❗️驚いて本当に鼻から牛乳が( ̄ii ̄)

インキの力で守れ!牛乳!!
「牛乳は他の飲み物と比べて栄養価が高いので雑菌が繁殖しやすいんです。また、紫外線によって風味が劣化します。だから、空気に触れさせないことはもちろん、どうやって太陽や蛍光灯の光から牛乳を守るかということに各メーカーさんは注力しています」
そこにインキの技術がどう関わっているんですか❓
「例えば、ベンガラという赤色の顔料には紫外線を防止する効果があり、これを使用した牛乳パックは赤色を基調にしたデザインになっています。あるいは、白いパックでも下地に黒色の遮光性のある特殊なインキを塗り、その上から白いインキを塗っている商品があります。見た目には白色だから純粋な紙の色かと思ってしまいますが、遮光性のある白い牛乳パックは、商品によってはわざわざ後から白いインキを塗っているんです」
本当にいろんなところにインキが関わっているんですね。とはいえ、空気以外ならなんでもなんて、やっぱり大げさな気がします。だって、本や漫画はスマホで読む時代ですよ。紙パックの色がインキというのはイメージできるけど、さすがにスマホなんかは関係ないですよねぇ(¬з¬)
そんな質問をすると、不敵な笑みを浮かべる近藤さん。まさか、関係しているの⁉️

これが赤色顔料のひとつ「ベンガラ(弁柄)」。土からとれる酸化鉄が主な成分で、旧石器時代から使われている最古の顔料

スマホの色だってインキなんです
「実は、スマホやテレビなどの液晶ディスプレイの色もインキで再現しているんです。紙への印刷は基本的にシアン(藍色)、マゼンタ(紅色)、イエロー、ブラックの4色をそれぞれ何%の割合で配合するかによって表現します。いっぽう、液晶ディスプレイは光の三原色と呼ばれるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)で再現します。この3つの色に使われているのがカラーレジストと呼ばれる特殊なインキです。薄いガラスの基盤にカラーレジストを塗り、裏から光の量を調整しながら当てることで、さまざまな色を再現しています」
うーむ、空気以外ならなんでも色がつけられるという話は大げさではないんですね。疑ってしまった私は愚か者よ〜でしたm(_ _)m

液晶ディスプレイなどで映像の「色」を生み出す「カラーフィルタ」の構成。カラーレジストというインキが使われている

さまざまなパッケージにインキは使用されている。特に食品包装の分野では高い安全性や機能性が求められる

これからどうなる?自動車の塗装
「今、研究開発が盛んに行われている分野としては自動車の塗装技術があります。自動車のボディへの色づけは、熱で塗料を硬くさせる焼付塗装という方法で行われます。その焼付塗装を何回も繰り返すことで傷つきにくいボディになるんです。ただ、塗装を重ねるとその分、車体は重くなります。近年はエコの観点や電気自動車への期待の高まりから車体を軽くし、燃費をよくしようという傾向があります。加えて、焼付塗装は高温で乾燥させることなどから、CO2を排出しやすくもあります。そこで焼付塗装に変わるカラーリング方法が研究されているんです」
車といえば、近藤さんも、あの方みたいに、やはりレーシングチームの監督なんかをやるんですか❓
「いえいえ、私は沖縄でゴルフ旅行を少々(^^)あと、今年はオリンピック観戦を楽しみました❗️」

電気自動車の車体の塗装は、フィルムに色材を印刷する方法など、従来に変わるカラーリングの研究・開発が進んでいる

誰にでも見やすい色がある?
オリンピックといえば、東京パラリンピックの入場行進で使われたプラカードが珍しいデザインだと話題になりました。黒地に黄色い文字で国名が書かれていて、特定の色同士を見分けるのが難しい人でも読みやすい配色だったそうですね。
「色を認識するために必要な目の細胞の働きが部分的に弱く、色の見え方がおおぜいの人とは違って見えてしまうことを色覚異常といいます。日本には約320万人の対象者がいると言われています。色覚異常の方がどんな見え方をしているのか、シミュレーションしてみると…」


「色覚異常には種類があり、すべての方がこのように見えるわけではありませんが、例えば、青信号が白っぽく見えたり、赤信号がグレーや黒に見えたりするんです。色覚異常の方にとっては日常生活のさまざまな場面でこうしたことが起こる可能性があるので、とても不便ですし、場合によっては警告ランプなどに気づかず、身に危険が及ぶことだってあります。そこで色の配色やデザインを工夫することで誰であっても判別ができる配色にするカラーユニバーサルデザイン(カラーUD)という考え方が近年、注目されるようになりました」
 オリンピックのプラカードもカラーUDに配慮した配色だったんですね。現在は家電メーカーや玩具メーカー、鉄道事業者など、さまざまな分野でカラーUDの取り組みが進んでいるそうです。
 東洋インキさんでは行政機関や企業に対してカラーUDに関するセミナーを開いたり、デザイン段階から色覚タイプの違いによる不便さを取り除くためのデザイン制作支援ツールを開発したりしているそうです。

路線図やカレンダー、ハザードマップなど情報を正しく読み取る必要があるデザインにカラーUDを採用するケースが多い


 いや〜それにしても色の世界って奥深いんですね、マッチさん!
「あ、私の名前は芸能人の近藤さんと読み方は一緒だけど、一文字漢字が違うんです。でも、名前は覚えてもらいやすいですね(笑)。モノづくりはアイデアを形にして豊かさ、快適さ、楽しさを提供すること。当社ではインキ技術を通じて、世界中の人々の暮らしにそっと寄り添い、支える仕事を心がけています。皆さんも将来、社会人になったら、生活・文化を創造する喜びを思う存分、味わってください❗️」
 マッチさん、本日は「いろいろ」ありがとうございました❗️色だけに(笑)。

東洋インキSCホールディングス 株式会社
1986年創業の老舗インキメーカーで、印刷インキ国内トップ、世界3位のシェアを誇る。印刷インキ以外にも塗料、粘接着剤、塗工材、高機能性素材、電子メディア材料など、「色」と「樹脂」を軸に化学材料に関する事業を展開するBtoBの総合化学メーカー。アメリカ、フランス、中国、韓国、タイ、ベトナムなど世界各国に約70社のグループ会社を持つ

文/阿部伸