お笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』新道竜巳の「馬鹿よ青春」第13回
「嫉妬を学ぶ〝ただの1日〟」

クリスマスってどう思います?高校のとき、嫉妬を覚えるための授業なんだと思っていました。
 11月くらいから街がきらびやかになり、ツリーが駅前や金持ちそうな家の前に飾られる。クリスマス、僕にはただの1日でしかない。
 デパートに行くとサンタのポップが飾られ、本番が近づくにつれて増殖する。街を歩くと「こんなところに、こんな装飾、いつの間に」と思う。飾りつけで日本中が本気になっている。デパートにいるカップルは普段より楽しそうに見える。近寄らないほうがいい。こいつらはリア充という毒を吐き出してくる。コンビニに入るとクリスマスの曲が流れ、店員さんがサンタの衣装をまといながら接客してくる。心なしか接客態度が明るく感じる。普段ならそれはいいことだ。しかし、サンタの服装の店員さんには近寄りたくない。シャンシャンシャンとサンタがソリでやって来そうな音を流す店すらある。僕は紙袋の中で割れて粉々になった風鈴を振っている音として聞くようにしている。
 だんだんポップに描かれた笑顔のサンタに不満を感じてくる。不法侵入してプレゼントという名の不法投棄をする犯罪者なのに、人々は待ちわびる。子どもの頃、「サンタはいる?いない?」論争があったが、いることをそんなに信じるなんて、子どもからどれだけ好かれているんだ。走るのが早いわけでもないのに。
 曲、ツリー、装飾。こんなに街をメチャクチャにして目的はなんだ!?「知らない人から物をもらってはいけません」と教わったのに、クリスマスだけはそのルールが破綻する。だいたいどこから収入を得ているんだ。これだけ日本中がサンタ一色になるのは税金が使われているからじゃないかと勘ぐってしまう。犯罪者に血税が使われているなら僕は反対運動をしてやる。
 同級生から「クリスマスどうするの?」とつまらない質問。この同級生は彼女がいるから、わざわざ「どうするの?」と聞いているんだ。こいつの戦略に引っかかってなるものかと「お前は?」という質問返しはせず、「いや、何もないけど…」と答えるスタイルを徹底してやる。25日、コンビニに行くと、売れ残ったケーキを半額で一生懸命売っている。しめしめと思う。
 こういう態度や心境になることを「嫉妬」という。僕は「嫉妬」をクリスマスで学んだ。

イラストレーション=本田しずまる

新道 竜巳
お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」のツッコミ、ネタ作り担当。コンビとして「THE MANZAI」や「M-1 グランプリ」の決勝に残るなど実力派として知られる。2018 年オフィス北野からサンミュージックへ移籍。