俺たちがいなくなったら
みんなの生活を守れない!

自動車総連の浜口誠参議院議員国交省自動車局の福薗さん都立墨田工業高校自動車科の現役女子高生と、シリーズで自動車整備士に関する取材をして来た今回の企画。最後は都立多摩工業高校出身で、現在はトヨタモビリティ東京(レクサス八王子)で働く清水直哉さんにお話をうかがってきました〜。

〈vol.12 冬号(2021年4月発行)より〉

小笠原流を身につけた自動車整備士がトヨタモビリティ東京のレクサス八王子にいるらしい。小笠原流って、なんかスゲ〜強い格闘技の流派じゃね?怖い人が出て来たらどうしよう…。そんなことを考えていたら、「こんにちは!」とさわやかな声が。

高級車ブランドの整備士はマナーも一流!

「よろしくお願いします❗️」と笑顔で挨拶するのは、2級自動車整備士の資格を取得し、整備士として働く清水直哉さん。ごっついお兄さんが現れるのかと思いきや、スラっとしたイケメンの登場で、それはそれでビックリ。あの〜、小笠原流って格闘技じゃないんですか
「礼儀作法の流派ですよ❗️レクサスでは修理の受付などを整備士が行うんです。そのため、ここで働く整備士は小笠原流礼法の研修を受けて、きちんとした立ち居振る舞いや言葉づかいを学ぶんです」
レクサスはトヨタ自動車の中でも高級車ブランド。そのレクサスを扱うには礼儀作法も大切なんですね。それにしても、接客もするなんて大変❗️
「接客のことを思うと、配属が決まったときは、正直、嫌だなぁと思いました(笑)。でも、他ではできない経験なので、今ではよかったと思っています」

3Kって言われるけども…

入社当初はトヨタブランドの別の拠点に所属していた清水さん。当時は点検や車検の業務が中心だったそうで、先輩とペアを組みながらじょじょに仕事の幅を広げていった。
「以前の店舗ではバスなどの大型自動車も扱っていました。専用工具やタイヤなど1つ1つが重くて大変でしたね。それに大型自動車は事故が起こると被害も大きいので、その分、作業は緊張しました」
いっぽう、今の店舗では傷や汚れに敏感なお客さんが多く、そうした部分に注意を払っているという。
「丁寧過ぎると時間がかかるし、早く作業をし過ぎれば正確さに欠けます。作業効率とスピードのバランスが難しいですね」
ところで、自動車整備士が本当に足りていないか質問をすると「メチャメチャそう感じる」という答えが。どうして目指す人が少ないのだろう❓❓
「給料が安いイメージがあるのかもしれませんが、それは個人個人の考え方によると思います。僕は3Kとも思わないし、むしろ、汚れたツナギだってカッコいいと思っています」
汚れは仕事をした証ですものね。ただ、工場が想像以上にきれいで驚きました。
「ここの店舗はお客様が作業を見に来ることもあるので、なおのこときれいにしています。また、車の情報はタブレット端末を使って管理するため、工場内には書類がありません。そういうのもきれいに見えるポイントかもしれません」

ずっとツナギを着ていたい

そもそも自動車整備士を目指した理由は
「祖父が整備工場を営んでいて、幼い頃から工具とかツナギとか、カッコいいなぁと思っていたんです。だから、小学1年の頃には自動車整備士になる❗️と決めていました。そのおじいちゃんが5年生のときに亡くなったのですが、田舎の小さな工場だったけど、すごい数の参列者が葬儀に集まりました。多くの人たちから慕われる立派な仕事なんだと知り、本格的に目指すようになったんです」
 それだけたくさんの車の安全を守っていたんですね。
「世の中って車がないと生活が成り立たないじゃないですか。救急車も車ですし、総理大臣だって車で移動します。その車を整備しているって、凄いことだし、カッコいいという言葉しか出てこない。『俺たちがいなくなったら、みんなの生活を守ることができない❗️』って、心のどこかで感じます」
 実際に自動車整備士がいなくなったら、みんなが困ることは間違いなし。「いつまでもツナギを着て現場で働きたい」と語る清水さんは、と〜っても頼もしく、と〜ってもカッコよく見えたのでした。

文=阿部 伸 写真=小泉 真治