「やっぱ、今の時代ってIoTじゃん?ビッグデータでインダストリー4.0な感じだよね!」
う〜ん、最近のモノづくり産業の話題って横文字ばかりで、よくわかりません…。そこで、日本能率協会コンサルティングの神山洋輔さんに、モノづくりの最新事情についてビシッと聞いてみました。スーツ姿がカッコいい神山さんなら、バシッと明快に答えを教えてくれるはず!
──さっそくですが、IoTやインダストリー4.0って!つまり!なんなんですか!!
う〜ん、なんなんでしょう??
──ズコーっ。
というのも、どちらも新しい言葉なので、企業や団体によって考え方がまちまちなんです。「IoT」は「Internet of Things(インターネット オブ シングス)」の頭文字を取った言葉で、センサーや機械などの(Things)がインターネットでつながる仕組みのこと。「インダストリー4.0」は直訳すれば「第4次産業革命」で、インターネットを使った「ネットワーク化」と言い換えることができるかもしれません。
──え〜っと、つまり、どういうことですか??
スマホって電話なのに、ネットにつながることで映画が観られたり、ゲームができたりしますよね。今では外出先からエアコンをつけ、お風呂を沸かすこともできます。こうした物と物、人と物がつながる仕組みをモノづくりの現場にも持ち込む動きが世界中で起きているんです。
──例えば、どんな取り組みがあるんですか?
よくあるのが、工場の工作機械にセンサーをつけるというもの。どのくらい稼働し、どういう使い方をしているのかを自動でモニタリングして、集めた情報をもとに「そろそろ壊れそうだからメンテナンスしてくださ〜い」と機械が自動で知らせてくれるんです。
あるいは、工場内を走るフォークリフトなどの動きをセンサーでモニタリングし、どうすれば効率よく荷物を運べるか、この工場にふさわしい台数は何台かを分析するデータを集めることもできます。
──いろんな問題が解決できるんですね。
他にも、例えば、自動装置でシリンダーを作るとします。メスになる筒とオスになる部品の大きさの誤差は、通常、寸法公差(すんぽうこうさ)といって、ある程度、許容して作ります。でも、完成した筒の寸法をセンサーで正確に測ることで、それに合わせてオスを作り、より誤差の少ないシリンダーが作れるようになるんです。しかも、それらを機械がすべて自動でやってくれるわけです。
──僕の頭のシリンダーも誤差をなくしたい…。
実は、本当のポイントはここから先です。例えば、これまで「車を作って売る」のが自動車メーカーの仕事でした。ところが、「そろそろ壊れそうですよ〜」とお客さんにお知らせできるということは、「アフターケアを売る」ことが自動車メーカーの仕事になるわけです。つまり、お金を儲ける仕組みが変わるんです。
これは何も自動車メーカーのような大手に限った話ではありません。私が仕事で関わっている中小企業に、船に乗せるコンプレッサーを作っている会社があります。船の機械が海の真ん中で故障したら大変ですよね。そのコンプレッサーは、メーカーが陸地で常にモニタリングすることで事故を未然に防いでいるんです。
こういうふうに、モノづくり企業がお客さんとつながることで、今までにないサービスが提供できるようになる。IoTにはそうした可能性があるので、第4次産業革命になるのではないかと考えられています。
──なるほど!将来のためにも、これからIoTやインダストリー4.0について調べまくるぞ!
う〜ん、どうでしょう??
──ズコーっ。やる気スイッチが入ったのに…。
確かに10年後には、大手や中小に関係なく、モノづくりの現場にはIoTの技術がどんどん入ってきます。そして、世界のさまざまな物がネットワークでつながり、生活スタイルも変わる可能性があります。だから、最先端の情報に興味を持つことは大切です。
けれど、機械が動く原理や溶接すると鉄がくっつく理屈は今後も絶対に変わりません。そして、「匠たくみの技」のような技能も機械では表現できず、失ってはいけない部分です。ですから、基礎的なことをしっかり身につけることが、将来、社会に出たときに役立つと思いますよ!
資料提供:株式会社日本能率協会コンサルティング
文=阿部 伸