トヨタ自動車・前副社長の河合さんに工業高校生の素朴なギモン、答えていただきました!

前回、トヨタ自動車の前副社長・河合満さんにご登場いただきましたが、都立墨田工業高校自動車科の皆さんから質問を募り、河合さんに素朴なギモンを投げかけてみました〜♪

〈vol.13 春号(2021年4月発行)より〉

Q今後、自動化が進むと、高卒ではトヨタに就職できなくなりますか?

 そんなことはまったくない。今でも人でないとできないことがたくさんあります。例えば、高級車のダッシュボードやドアのミシン目、あれは全部手でやっているんです。それに自動化するには手作業の感覚を数値化する必要があります。そして、さらに自動化を進歩させるには、人が「こんな方法のほうが早くできるぞ」と実際に手を動かし、それをまた数値化する必要があります。つまり、進化には人の手が不可欠なんです。技術が先行してロボットが勝手にやってくれることなんて何ひとつありません。

 だから、僕は手作業を広めないといけないと思っています。トヨタでは鍛造も塗装も組立も成型も手作業の生産ラインがあります。そして、一番うまい人の技術をロボットに移植するんです。これが下手な人の技術をティーチングしてしまうと、ロボットも下手になってしまいます。ですから、技術と技能は常にスパイラル、螺旋階段のようにお互いに作用しながら進歩します。技術が進化したからいいモノができるんじゃなくて、人の感性や感覚が必ず必要なんです。だから、今後も高卒採用がなくなることはありません。

Q今後、電気自動車が主流となり、ガソリン車はなくなってしまうのですか?

 これから二酸化炭素(CO2)ゼロに向けた車づくりは進んでいきます。今、電気自動車(EV)が主流と盛んに言われていますが、EV自体がCO2を排出しないとしても、現在、日本の電気の多くは火力発電所でつくられ、そこではCO2が排出されています。だから、すべてEVにすればいいというわけではありません。何がいいかはお客さんが決めることです。そのためにもトヨタは、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、EV、燃料電池車(FCV)とフルラインアップの電動車を用意しています。僕自身はガソリン車の音が好きなんです。ガソリン車がいいという人は今でも多いですね。

Qこの春、トヨタに入社します。社会人として働く上で大切なことは?

 謙虚、素直、感謝の3つ。いろいろなことに感謝して、「ありがとう」と言える人が一番いい。そして、素直にわからないことは「わからない」「教えてください」と言える。教えてくれたら、「ありがとう」。こういう単純な姿勢が一番、先輩や上司に可愛がられます。そして、どんどん積極的に自分でやりたいことを見つけて、「俺はこの会社でこれをやりたい!」と思ってくれる方がいいですね。先輩や上司に可愛がられる人は、結局、自分のやりたいことをどんどんやれるようになりますよ。