お笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』新道竜巳の「馬鹿よ青春」第12回
「スイカに塩」

〈vol.14 夏号(2021年7月発行)より〉

 スイカに塩、かけますか?僕は高校時代、リーゼントをバシっとキメていた。そして、夏にはスイカをむさぼり食っていた。家族とスイカを食べるとお父さんは必ず塩をかける。「なんでかけるの?」「甘くなるんだよ」。試しにかけてみた。しょっぱい後にスイカの味がする。ただそれだけ。
 後日、またスイカを食べた。お父さんは塩をかける。「それ、しょっぱいだけだよね」「いや、甘みが強くなるんだよ」。試しにかけてみた。しょっぱい後にスイカの味がする。ただそれだけ。お父さんは味覚がおかしくなっていると思った。関わるのを控えた。
 ある日、友だちの家に遊びに行った。スイカが出てきた。「塩いる?甘くなるよ」。試しにかけてみた。しょっぱい後にスイカの味がする。ただそれだけ。「しょっぱいんだけど」「量が少ないんだよ」。塩がさらに振りかけられる。もうスイカの甘みはわからず、涙が出るほどしょっぱい。「ね、甘いでしょ?」。その友だちとは距離を置くことにした。
 ある日、すごく甘くておいしいスイカを食べていると、友だちが許可もなく塩をかけてきた。「え…」「甘くなるから」。もう十分に甘い。なのに、なぜスイカは甘ければ甘いほどいいとしているのか不思議だ。食べた。しょっぱい後に、すごく甘いスイカの味がする。しかし、元からすごく甘かったので塩のおかげではない。さっさと表面の塩を舐めつくしてから食べようとすると、また塩をかけてくる。「何するの?しょっぱいだけだから」「甘くないの?量が少ないんだよ」。さらに塩が振りかけられる。食べると涙が出るほどしょっぱくて、もうスイカの甘みもわからない。「ね、甘いでしょ?」。その友だちとは距離を置くことにした。
 ある日、別の友だちとスイカを食べた。「塩かけないの?」と僕。「かけても甘く感じないんだ」と友だち。ついに仲間を発見した。砂漠で泉を発見したくらいの感動だった。こいつは永遠の親友だ。
 僕は今もスイカに塩はかけない。塩そのものが甘くならないのは事実だし、しょっぱく感じる時間を認められない。当時、僕はリーゼントをキメ、スイカに塩は甘くないと世間に反抗しながら生きていくことを決めた。ちなみに、塩をかけなかった親友は今でも会うような友人でもなく、まったく連絡を取っていない。

イラストレーション=本田しずまる

新道 竜巳
お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」のツッコミ、ネタ作り担当。コンビとして「THE MANZAI」や「M-1 グランプリ」の決勝に残るなど実力派として知られる。2018 年オフィス北野からサンミュージックへ移籍。