お笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』新道竜巳の「馬鹿よ青春」第3回

第3回「リーゼントとかつお梅」

皆さん、カツアゲしたことありますか。休み時間になると、家から持って来たおにぎりを必ず食べる同級生がいました。そのおにぎりが他のどのおにぎりよりも群を抜いておいしそうなのです。海苔とご飯を別々にラップでくるむ手の込みよう。どうにかしてそれを食べたい…。

横目でうかがっていると、そいつは毎日おにぎりを平均5つ持ってきていることがわかりました。そして、友だちにはあげるときがあることも。

さらに調査を続けていると、ある日、そいつの性格の一部が露呈しました。そいつは不良の顔色をうかがいながら生活している所作が見て取れたのです。私はリーゼントにして学校に通いつつ、授業は全部参加し、喧嘩はせずという不良もどき。リーゼントが役に立つかも…。

そこで「おにぎりをもらう作戦」に動き出すことに。まずは、いつもよりキツメにリーゼントを仕上げ、危ない雰囲気を装いつつ、一言目は高圧的に。そして、おにぎりのクオリティーを褒めて、懐の深さを見せつける。あまり長く喋るとボロが出るので簡潔にまとめよう。これでイケる、はず。

休み時間、そいつがおにぎりを食べ始めた。今だ。

「おい、お前」
「なに?」
「腹減るの早いね」

語尾が「な」だと強すぎるから、あえて「ね」にした。

「まだ2時間目だぞ」
「なんかお腹減っちゃって」

ここでおにぎりに興味がある意思を示す。

「具は何が入ってるの?」
「いろいろだけど、1個あげるよ」

よっしゃー、計算通り。しかし、そいつはなかなか渡してこない。マゴマゴするうちにチャイムが鳴り、もらいそびれてしまった。

次の休み時間まで覚えてくれてるかな。「さっきくれるって言ったおにぎりくれよ」はちょっとカッコ悪くて言えないな。そんなことが頭に充満して授業がまったく入ってこず。

結局、次の休み時間に難なく手に入れることができた。食べた具が当時、あまり知られていなかった「かつお梅」。初めて食べたあまりのうまさに高校3年間の思い出の上位に「かつお梅」があります。不良もどきのカツアゲの思い出でした。

〈冬号 vol.5(2019年1月発行)より〉