アツいぜ!部活道〜夢をのせ、世界一に向かって飛べ!〜

埼玉県立大宮工業高校「ラジオ部」

2020年冬号 Vol.9 掲載

ロケットを飛ばしたい!その夢をひたむきに追いかけて、世界のテッペンを目指している部活が埼玉県の大宮にあるんです。埼玉県立大宮工業高校(以下、宮工/みやこう)のラジオ部は、ロケット甲子園2連覇をはじめ、IRCモデルロケット国際大会で2年続けて総合2位と総合3位を獲得。なんでそんなに強いの?じっくり聞きました!

左から髙橋藍人さん(電子機械科 3 年)、中山勇也斗さん(機械科 3 年)、平林勇人さん(電子機械科 3 年)

ロケットなのにラジオ部って!?

「無線に興味があって入部したんです。それがまさかロケットをやることになるとは…」と語るのは、2018年のIRCモデルロケット国際大会に2年生で参加、今年の秋に引退した元部長の中山さん。そういえば、なぜ“ラジオ部”なの?

「ラジオ部は、宮工創立時から90年以上も続く古い部活。昔はアマチュア無線やラジオの電子工作をしていたそうです。その技術は継承しつつ、時代に合わせて活動内容を変え、現在はロケットとロボットのプロジェクトを中心に活動中です」

部員たちのこだわりが結集したロケット

「ロケットは、それぞれが担当した部品を組み立てて完成させます。自分のつくった部品がきちんと機能して飛び、結果が出たときは感動しますね」というのは、2019年のロケット甲子園でパラシュートを担当した髙橋さん。「少しでも歪んでいるとまっすぐ降りてこないので、寸法通りに仕上げることが大切です」。

フィン(羽根)を担当した平林さんは、「フィンは最も重要な部品のひとつ。木板をエポキシ樹脂で強化して表面をヤスリがけするのですが、わずかな凸凹でも空気抵抗が生まれます。4枚のフィンをいかに均一につくれるかが腕の見せどころです」といいます。

設計担当の中山さんに飛ばし方のコツを聞くと、「全長848mmという比較的大型のモデルロケットを正確に発射するには、やはり風向きを読むことが大切。気温や湿度によっても飛び方が変わるので、発射する瞬間の気象条件に合わせて、発射角度や重さを調整するのがポイントです」と教えてくれました。

輝かしい成績の証!ラジオ部は2016年と2017年のロケット甲子園で優勝。国際大会では、2017年に総合2位、2018年に総合3位を獲得している

国際大会でまさかのアクシデント発生!

イギリスで開催された2018年の国際大会ではきっと、すんごい記録を叩き出したんでしょ、中山さん!?「実は…失格でした」。えっ、どういうこと!?

「使い慣れた米国製エンジンで挑む予定でしたが、大会直前にそのエンジンは『イギリス国内での使用が認められていない』という連絡が来て…。本番で配られたエンジンは想定よりも寸法が細くて、固定フックがうまくかからず降下中に脱落。部品脱落は失格扱いなので、記録が残らなかったんです。言葉にできないほどのショックでした」

モデルロケットのエンジン搭載部分。矢印で示した飛び出たツメのようなものが、エンジンを固定するためのフック

英語ならアメリカにだって負けないぞ!

その状況を打破できたのは、英語プレゼン審査があったからなのだそう。

「プレゼンは『英語が第一言語のアメリカにも勝つ!』という気持ちで準備していたんです。英語は毎日2時間、英語科の先生方が発音などを細かく指導してくださいました。本番では、一人ひとりの立ち位置や目線の動き、身振り手振りにまで気を配り、チームワークのよさをアピール。手応えを得ました」

その結果、プレゼン部門では2位を獲得!打ち上げ部門で失格だったイギリスを上回り、総合3位の快挙を成し遂げたのです。

ロケットは専用ソフトを使ってパソコンで設計。まず理想のロケットを思い描いて設計し、それから各パーツの大きさや重さなどを変えて空力や重量配分を微調整していく

今度はそれぞれの道でテッペンを目指す

「後輩たちには、もう一度世界大会へ行って、今度こそ優勝を勝ち取ってほしいですね」と、中山さんは語ります。世界へ挑戦した思い出を胸に刻み、この春から別々の道へと進む3人。でもその目はみんな、天高く飛翔するロケットを見つめるかのように、まっすぐ夢に向かって輝いていたのでした。

ガッチリとスクラムを組む後輩部員たち。左から豊田夕輝さん(電子機械科1年生/新副部長)、山崎陽亮さん(電気科2年生/新部長)、成田涼真さん(電子機械科1年生/新副部長)

文・写真=小泉 真治
text & photograph KOIZUMI SHINJI

〈vol.9 冬号(2020年1月発行)より〉