お笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』新道竜巳の「馬鹿よ青春」第7回

2020年冬号 Vol.9 掲載

第7回「入れてもらってもいい?」

軍団に属したことはありますか?中学生の頃、リーゼントをばっちりキメた僕は属していました。その軍団は「入れてもらってもいい?」そんなことを言われることがときどきあり、最終的にメンバーは20人まで増えることに。名前は…鉄棒軍団。

教室に居場所がなく、お昼休みにサッカーにも入れてもらえない、そんな人の集まりでした。教室と校庭の間に挟まれるようにして存在する鉄棒に心も体もしがみつきながら学校生活を送っていました。

学校の遊具で1番人気のないものが鉄棒で、だから学年で目立つ1軍や2軍の奴らに占領されることがないと思いつき、集まり始めたのがキッカケだった気がします。なので決してスポーツのできるメンバーではなく、むしろ体育を休みそうな人間がたどり着いた場所が鉄棒でした。登校拒否の一歩手前で、「あれ?あそこにいるメンバーとはやっていける気がする」と野生の勘が働き、普段無口なのに勇気を振り絞ってかけた言葉が「入れてもらってもいい?」。

おそらく自主的に組織に属そうとしたのは全員が人生で初めてだったと思います。だから、決して「入りたい!」とか「入れてくれる?」ではなく、蚊の鳴くような声で「入れてもらってもいい?」。

そんな僕らをベランダから見て馬鹿にする生徒もいました。しかし、風が強くても、雨が降っても、鉄棒に集まる仲間がいる。気づけば逆上がりができなかった僕も連続逆上がり20回以上、連続前回り60回以上できるように。馬鹿にしていたクラスの連中も鉄棒がやけに上手くできるようになると黙り始めます。しかしこれは尊敬ではない。部活にも入らず、明確な目標もないのに、鉄棒がどんどんうまくなっていく僕たちを見て、引いたんだと思います。

ある日、「俺も昔、連続前回り40回できたよ」と校長先生が話しかけてきました。連続前回り40回という目標を変にかかげられた気がして、メンバーは全員40回以上できるようになった。そのときの集中力が生かされて、僕はM-1グランプリで決勝に行けたと言っても過言ではない。まわりから馬鹿にされても目標に向かって努力し続ける。すると成長とともにまわりは態度を変えます。努力は裏切らない。

イラストレーション=本田静丸

〈vol.9 冬号(2020年1月発行)より〉

新道 竜巳

お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」のツッコミ、ネタ作り担当。コンビとして「THE MANZAI」や「M-1 グランプリ」の決勝に残るなど実力派として知られる。2018 年オフィス北野からサンミュージックへ移籍。