未来を照らす救世主 謎の職業「ロボットSIer(エスアイヤー)」の正体を探れ! 第1回

未来を照らす救世主
謎の職業「ロボットSIer(エスアイヤー)」の正体を探れ!

ロボットといえば、Pepperくんのようなヒューマノイドをイメージしがち。だけど、世の中に普及しているロボットの大半が産業用ロボットだって知ってました?
そんな産業用ロボットの導入に欠かせない職業があります。それが「ロボットSIer」。えっ、そんな仕事、知らないって?実は編集部も知りませんでしたw
誰も知らない謎の職業「ロボットSIer(エスアイヤー)」の正体を探りに、産業用ロボットのショールーム「スマラボ」へ、いざ潜入!

ロボットシステム×IoTのショールーム「スマラボ」
最先端のロボットシステムとIoT技術が集結したショールーム「Smart Factory Conductor LABO(スマートファクトリーコンダクターラボ 略称:スマラボ)」。生産年人口の減少や工場の自動化・IoT化の遅れなど、日本のモノづくり業界が抱える課題の解決を目指し、2018年開設。(株)FAプロダクツ、(株)オフィス エフエイ・コム、ロボコム(株)による共同運営。

日本は産業用ロボット大国なんです

日本のロボット技術はスゴイ!というイメージはなんとなくあるけれど、実は産業用ロボットの世界4大メーカーのうち2社が日本企業。しかも出荷総額は日本が世界一位なんですって。つまり、日本は世界も認める産業用ロボット大国。

産業用ロボットとは人間の代わりに働くロボットのこと。現在、いろんな業界が人手不足と言われていますが、「だったらロボットを使えばいいじゃん!」ということで、国じゅうの期待が寄せられている業界なんです。

「それだけじゃないんですよ〜。日本の経済を元気にする可能性を秘めているんです!」。お、なんだか夢のあるお話を語るあなたは一体だ〜れ?

海外輸出で国内経済も元気100倍!

声の主は産業用ロボットのショールーム「Smart Factory Conductor LABO(スマートファクトリーコンダクターラボ)」の天野眞也さんでした。さっきの話、詳しく教えてもらえませんか?

天野眞也さん
いろいろ教えてくれる親切なスタッフさん→

「日本は技術大国と言われていますが、身のまわりにあるケータイも電化製品も海外製ばかりだと思いません?」

確かに、かつては日本の家電メーカーは世界のトップシェアを誇っていたし、自動車産業も元気でした。けれども最近は海外勢に押されている感が…。

「そこで産業用ロボット大国として、今後は世界、特に工業化が進む東南アジアにどんどんロボットを輸出していこうという準備が進められているんです。そうやって日本のモノが海外で売れると日本の経済が潤います。だから、産業用ロボット業界に今、多くの人が注目しているんです」

とっても未来があるお話ですね!「ところが、そんなに簡単でもないんです…」。えっ、どうして??

圧倒的に◯◯が足りていない!!

「なぜなら、人材が足りていないんです!」。ですよね、だからロボットが重要になると。「いや、だから、人が足りていないの」。うんうん、だからロボットが…。

「そうではなくて、産業用ロボットは半完結製品と呼ばれています。ロボット単体では『動く』ことはできても人の代わりに『仕事をする』ことはできません。ハンドを取り付け、動き方をプログラムし、センサやコンベアなどの周辺設備と組み合わせる。そうしてロボットをひとつの生産システムの中に統合することで、初めて『仕事をする』という行為が可能になるんです」

なるほど。人間だって、働く前に研修を受けたり技能を身につけたりしますものね。

「このように目的に合わせてロボットを設計して組み立てたり、導入を提案したりする人や企業のことを『ロボットシステムインテグレータ(ロボットSIer)』と呼んでいます。今、この仕事の担い手が足りていないんです」

国を挙げてロボットSIerを育てる機運が

モノづくり産業で働く人の数は年々、減少。しかも少子高齢化がますます進み…人材不足の問題は深刻化しています。だからこそ産業用ロボットが注目されているのに、「人材不足を解消するための人材が不足」という何とも言えない状況に陥っているのです。

そこで経済産業省やロボット産業に関係する企業などが集まり、昨年、「ロボットSIer」という呼び名を考えたのでした。そうです、実はこの職業、去年、名前ができたばかり。

「これまで電気技術者などによって産業用ロボットの導入は進められてきましたが、生産現場の課題を分析し、最適なシステムを構築するエキスパート/職業としてちゃんとこの仕事を確立させようと、昨年、協会が設立されました。そして、国を挙げて、ロボットSIerを育てようという機運が高まっているんです」

現時点の規模よりも今後伸びるかどうか

「あ、そういえば、ご挨拶が遅れまして」と天野さんと名刺交換をしたところ…天野さんって、ショールームの親切なスタッフさんかと思いきや、なんと産業用ロボットに関連した企業の会長さんや社長さんをやられているお方でした〜( ゚ロ゚屮) 屮

天野眞也さん
←実はスゴいお方でした

「ロボットSIer は新しい職業。だから、知識やスキルをまだ持ち合わせてなくても問題ないし、名前を知らなくて当然です。80年前、自動車産業が今のようにメジャーではなかったころ、自動車産業で働こうなんて人は少数だった。ところが、その後、トヨタなどは大会社に成長します。就職先を選ぶとき、現時点での業界や会社の規模ではなく、これから伸びるかどうかで選ぶと、絶対に将来が楽しくなりますよ!それにSIerは新しい技術を組み合わせて最適なシステムをつむぎ出す仕事。例えば、メーカーは新技術を開発しても他メーカーに似たような技術を開発され、追い越されるかもしれない。SIerの場合はそういう心配がなく、常に進化と進歩を追求する刺激的な仕事なんです」

アジアでもヨーロッパでも販売台数が増え続けている産業用ロボット。導入先も自動車、機械、建築の他に食品や医薬品などさまざまな分野に広がりつつあります。ロボットSIerって初めて聞いた職業でしたが、今後、世界中で人気を集めそう。

「仕事内容も現代版宮大工みたいで奥深いんですよ」。その奥深さを残りの行数が少ないので1行で表現してください!「短っ、それはムリ!」。というワケで、次回はロボットSIerの仕事内容を深掘りします!!

天野眞也さん
FAプロダクツ 代表取締役会長/ロボコム 代表取締役/日本サポートシステム 代表取締役/ロボコム・アンド・エフエイコム 代表取締役社長

文= 阿部 伸/写真= 高永 三津子 text ABE SHIN / photograph TAKANAGA MITSUKO