“最大限”に挑んだ技能五輪。その経験を生かして、トヨタで技術開発!

トヨタ自動車で働く卒業生に会いに行こう!

〈vol.13 春号(2021年4月発行)より〉

トヨタ自動車の前副社長・河合満さんへの取材後、愛媛県立松山工業高校の情報電子科を卒業した北本悠真さんにもインタビューをしました♪北本さんはなんと、技能五輪国際大会で銅メダルに輝いたスゴ腕エンジニアなんです!

ちょっと未来のクルマを開発しています

 仕事のこと、何でも聞いてください!でも、僕の所属は制御電子システム開発部。数年先の自動車に搭載される重要な電子部品の開発をしているので機密情報が多く、お話しできないことも(笑)。

 担当しているのは主にソフトウェアの評価です。正常に動作するかどうか、バグがあればその場所を特定するなど、品質を守るために欠かせない仕事です。

 ソフトウェアって、ハードウェア側に問題があっても正しく動かないことが多いんです。ソフトとハード、それぞれをわかっていることがこの仕事では大切です。そうした両方の知識を生かして、上手くトラブルを解決できたときはやりがいを感じますね。

 でも、まだまだ未熟な点も…。仕事は多くの人と一緒に進めるものなので、コミュニケーションが大切です。そうした部分に難しさを感じることがあり、今後は柔軟な対応力を磨いていきたいと思っています。

技能五輪国際大会に日本代表として出場!

 トヨタ自動車に入社したきっかけは、高校生のときに見た技能五輪の電子機器組立て競技で、トヨタの選手がものすごく強かったから。この競技は僕も高校の頃から取り組んでいて、ハードとソフト、両方の知識が必要な点など、今の仕事に通じるところがあります。技能五輪でのトヨタの選手は広範囲にわたる知識を、きちんと自分のモノづくりに落とし込んでいる姿がカッコよくて、憧れました。それで「自分もそうなりたい!」と思い、志望することに。

 競技大会への出場経験は、とても貴重です。資格試験は一定の点数を超えれば合格になり、いわば自分の最低限の技能を保証するもの。一方、競技大会は自分の最大限が試されます。スポーツと違って、モノづくりはそういう場が少ないので、チャレンジしてよかったなと思っています。

 入社後に挑んだ技能五輪では国際大会まで勝ち進むことができました。国際大会の雰囲気は、息を飲むものがありましたね。よくニュースでオリンピックの選手村や開会式などの様子を見ることがありますが、それに劣らずド派手。本当にオリンピックに出ているみたいで、「自分は日本代表なんだ」という実感がわきました。

技能五輪国際大会にて。 技能五輪は技能レベルを競う大会で、技能者の国際交流などを目的として1950年から開催。国際大会は2年に1度開催され、原則として前年の全国大会優勝者が日本代表として出場する

堂々の銅メダルを獲得!

 競技内容は回路図や仕様などが書かれた用紙を参照しながら、その場で電子機器を設計、製作、実装して、そのスキルを競い合うというもの。競技中には通訳がつきますが、専門用語などは訳してもらえないので、ある程度の英語のスキルが必要です。僕は英語が得意じゃなかったので、国際大会の出場が決まってから懸命に勉強しました。

 結果発表を待っている間は、ずっと緊張しっぱなしで、何も手につかず…(苦笑)。銅メダルだとわかったときは、「ああ終わったんだな」と放心状態になりました。

 今思えば、高校時代からずっと目標にしてきた大会がようやくゴールを迎えた、という気持ちが強かったんだと思います。これまで取り組んできたことの成果として国際大会で銅メダルを獲得できたことは、とても誇りに思います。

ロシアのカザンで開かれた第45回技能五輪国際大会に出場したトヨタの選手団。北本さんは一番右。「どんな課題にも対応できるように、常に最新情報をキャッチしておくことが大切」と入賞の秘訣を教えてくれた

工業高校と技能五輪での学びが強みに

 工業高校では専門分野について学ぶことができ、さらに技能五輪や高校生ものづくりコンテストといった競技大会に特化した知識や技能も重点的に学びました。ハードとソフト、どちらかだけなら詳しいという人は多いのですが、競技を通じて、その両方を学べたことが、今の仕事にも生かされていて、僕の強みになっています。

 僕が開発にたずさわった自動車は、まだ世に出ていません。しかし近い将来、憧れていた未来の技術が詰まった自動車として登場したときには、「僕が開発したんだよ!」と胸を張って言えるように、これからも頑張って結果を出していきたいです。

文/小泉 真治  写真提供:トヨタ自動車