「曲がる半導体」で、きみも億万長者!? フレキシブルエレクトロニクスが世界を変える

曲がればいろんなモノが便利になる

ところで、この〝曲がる半導体〟。ただ曲げて楽しむだけでは、面白くありません。曲がることを「機能」として利用したら、もっと便利なモノができるんじゃないでしょうか。フレキシブルな発想を持った10代のみなさんなら、どんな便利なモノをつくりますか?ひょっとしたら、アイデア1つで億万長者になれるかもしれません。私たちの研究チームでは、フレキシブルデバイスを使った圧力センサーをつくり、ベッドに取りつけました。

人間は、寝返りを打てず同じ姿勢で寝ていると「床ずれ」を起こします。長い時間、一定の姿勢で寝ていることがベッドのセンサーで検出できれば、床ずれの予防につながり、介護の現場で役立つのでは?と考えたのです。

ところが実際にそのベッドで寝てみると、あまり寝心地がよくありません。フィルム状の圧力センサーは薄いとはいえ、ふとんのようにふかふかではなく、パリパリとした感触なので…。

そこで今度は、非接触型の人感センサーを使ってベッドをつくりました。センサーの仕組みはスマホのタッチパネルと基本的に一緒。フィルムの表面と裏面の電極の大きさをちょっとだけ変え、人間が動くとセンサー内に電流変化が起き、動きを観測できるようにしました。

ノイズ?実は大切な「シグナル」だった

さて、ここでクイズです。このベッドに人間が寝ていると、約4秒周期でノイズのようなものが入りました。これはいったい何でしょうか?

ノイズをデータ解析にかけると、ただの「ノイズ=雑音」ではなく、「シグナル=信号」だということがわかりました。4秒周期のシグナルとは…実は呼吸。つまり、呼吸で胸が動くことを観察することができたんです。さらにセンサーの感度を上げると、今度は1秒周期でノイズのようなものが入ります。これもまたシグナルでした。もうお分かりですね。このシグナルは心拍です。

この技術は、睡眠時無呼吸症候群という病気の研究に使われました。これまでの検査では、体にたくさんの機器を取り付けるため、普段のようにぐっすり眠れないケースもありました。ところがこのベッドの開発によって、体に何も付けず、いつものようにベッドに寝るだけで検査ができるようになったのです。

「曲がる」から「伸びる」へ

その次に私たちはもっと体に密着できれば、さらに面白いモノができるのではないかと考えました。しかし、人間の体のように複雑な曲面にフィットさせるためには、曲がるだけでは不十分。今度は、グイ〜ンと伸ばしても配線などが切れずに正しく動作する「ストレッチ(伸縮)性」のあるデバイスが欲しくなりました。

これが「フレキシブルエレクトロニクス」!

着用したままでもスマホが操作できる手袋がありますよね。あれは導電性繊維でつくられています。その繊維を短くして電極に応用すると、伸縮性のある圧力センサーがつくれます。それをストレッチ性のあるシートにたくさん配置することで、くちゃくちゃに曲げたりグイッと伸ばしたりしても壊れにくい、柔軟な圧力センサーシー
トができるんです。これなら人間の体にもフィットさせられます。

例えば、このセンサーを靴の中敷きに応用すると、足のどの部分にどれくらいの体重がかかっているかが分かります。アスリートの育成やリハビリの効率化に役立てられるというわけです。