お笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』新道竜巳の「馬鹿よ青春」第9回

2020年秋号 Vol.11 掲載

第9回「かもしれない日常」

新型コロナウイルス、終息しませんね。友だちと遊ぶのも「かかってしまうかもしれない」「うつしてしまうかもしれない」が常につきまといます。対策をしてるといえども仲間と会うと気が緩むことも。そんなときこそ「かもしれない」をお忘れなく。


この春、裏方の仕事をやっていた仲間が亡くなりました。うつ病による自殺です。その人は亡くなる少し前に信頼している人が病気で亡くなったショックと、仕事がうまくいかない悩み、そしてそのタイミングでの自粛という流れで落ち込んでしまいました。


あまり仕事がなくても僕より先輩だったので飲みに行くときはおごってくれます。気を遣ってくれて、優しい。ただ、悩みを抱え込んでしまうタイプで、ストレスを発散するのがうまくない方でした。


僕と飲んでいるとき、「今の仕事辞めようかな」と言っていて、そのときは信頼している人が亡くなったことを知らなかったため(教えてもくれなかった)、引き止めるだけの行為しかできませんでした。もし、もっと早く仲間の気持ちを知ることができ、もっと連絡をしていたら…と思うと悔しくて仕方がないです。


皆さんの仲間も悩みをためて、発散できないときがあるかもしれません。そんなときこそ感染しないように工夫をして、ストレスを発散しましょう。仲間同士の会話はとても助かるときがあります。もし悩んだらその悩みを信頼できる仲間にちゃんと言うことも忘れないで下さい。そして、みんなのストレスを軽減する1つになれるよう、僕も漫才を頑張ります。


仕事は以前のようにライブができなくなりました。その代わり、仲間とリモートでつながりながら、動画を配信する試みも始めました。リモートは複数人だと、しゃべるリズムと間を取るのが難しいです。コロナ以前はしゃべる内容ばかりに気を取られがちでしたが、笑いはリズムと間のほうが大事だと気づかされました。


無観客ライブもやっています。お客さんがいなくて寂しいけど、現場に数人しかいないことで、強い結束力でつながれた気持ちになれるという発見がありました。


やっぱり人とのつながりはいいものです。こんな時期だからこそ、疎遠になった友人にリモートで連絡を取るいいタイミングかと思います。そして、再会することになった際には「かもしれない日常」をお忘れなく。

イラストレーション=本田しずまる

新道 竜巳

お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」のツッコミ、ネタ作り担当。コンビとして「THE MANZAI」や「M-1 グランプリ」の決勝に残るなど実力派として知られる。2018 年オフィス北野からサンミュージックへ移籍。