僕は高校に行くのが嫌だった。というのも、仲のいい同級生をつくるコトができなかったから。自分が悪いのだけど、なんか、舐められたくないからと、同級生との間に壁をつくっていた。
学校からの帰り道、古本屋を見つけ、なんとなく入ってみた。古本独特の渋い匂いがして、この匂いを嗅ぐとやけに落ち着く。狭い店内では50代くらいのおばちゃんが1人で店番をしていた。何気なく話すと、好きな漫画の話ができたということもあり、ものすごく楽しく、会話が弾んだ。僕はおばちゃんとの間に壁をつくらなかった。売れている本の話や売値として高い本の話、今おばちゃんの店が求めている漫画のタイトルの話などをしていると、あっという間に時間が過ぎた。
「ジョジョの奇妙な冒険」が好きで模写をしたら、おばちゃんがその絵を気に入り、店内に飾ってくれた。その後も僕の絵がお店の壁に増えていき、そんな僕の絵を買いたいというお客さんもいたと後から聞いて、すごくうれしい気持ちになりました。
おばちゃんが求めていた漫画を他の古本屋で見つけて買い、それを持っていくと少しだけ高く買い取ってくれた。他の古本屋の店主からも「今、価値のある本はどれか」ということを聞き出すなど、古本について情報収集したりもした。しかし、中には嘘をつく店主がいて、「この『鉄腕アトム』は東京の古本屋なら高額で買い取ってくれるよ」と言われ、真に受けて買い、神田まで売りに行ったが何の価値もないと分かって愕然とした(今だったらネットで調べられるけど、当時はケータイすら一般的ではなかった)。だけど、古本屋を通じて、うまい話をもってくる他人などそもそもいるわけがないという勉強ができた。
古本屋は開業するとき、どうやって古本を集めるのかをおばちゃんに訊ねたことがあった。業者から古本の塊を買い取るらしい。その塊には何が入っているのか分からなく、福袋みたいなものらしい。古本屋が古本屋として「さまになる」だけの量を仕入れるために買うのだとか。学校でつらいコトや居心地が悪いコトなどがあっても、自分の居場所があるコトによって毎日楽しい瞬間を味わえた、そんなお話でした。
今回が最終回です。思い出話を書くのもこれで最後になります。文章書く仕事を募集中です!