お笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』新道竜巳の「馬鹿よ青春」第14回 「冬のおススメ幸せコース」

 冬って寒くないですか?高校生の頃の冬は特に寒く感じました。それは中学生の頃まで、寒さよりも雪で遊ぶ楽しさが勝っていたからかもしれません。高校からは世間にも雪にもスカした態度を取るようになったため、余計に寒く感じたのかもしれません。
 冬は嫌いです。寒いと貧しい気持ちになってしまうから。マッチ売りの少女は雪の中、マッチに火をつけて暖まりました。僕はお金がない分、ただでも貧しい状態が寒さでさらに貧しい気持ちにならないように工夫しています。それは電気を存分に使うこと。部屋で厚着をすると冬を感じてしまうから、夏と同じ格好をするために暖房をつけ、コタツをつけ、動物の心温まる動画を見て、一人鍋をします。すると「今日、暑すぎだろ」と冬であることを完全に忘れ、薄着のまま外に出てしまい、現実に引き戻されることがあります。
 電気代がもったいないと思う人がいるかもしれません。でも、実家に帰ったり、初詣に行ったり、どんちゃん騒ぎをしたり、そんなことをせずに電気代を少し多めに使っているだけなので、むしろお金の節約になり、家にいるだけなのでCO2の輩出量も少ないです。
 高校生の頃、同級生が彼女と歩いている姿を見るだけで冬は体も心も寒くなりました。夏は暑いし、昆虫で気が散るので嫉妬心がゆるくなります。でも、寒いと彼女づれが異常に憎くて仕方なくなります。このまま2人でクリスマスを過ごし、初詣を過ごす。「なんじゃ、その幸せ連続コンボは」と思うと、嫉妬するなという方が無理です。
 ある日、好きな人が僕と同じ中学校のサッカー部のエースとつき合っているという噂を耳にしました。なぜかそういう聞きたくない話が自分のところに届くタイミングが冬だったりします。
 路面が凍るせいか、自転車で転ぶのが多いのも冬です。クリスマスが近づくにつれて小金持ちの一軒家が飾りづけを始め、そんな装飾を見ると体も心も寒くなるので目をそむけ、するとそむけた方向に手をつないだカップルがいて、だから今度は目を伏せると自転車がスリップし、ただ転んだだけよりも何倍も痛い思いをするハメになります。結局、家を出ないのが一番です。冬は電気を使って家から出ない。これが私のおススメ幸せコースだと思います。

イラストレーション=本田しずまる

新道 竜巳
お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」のツッコミ、ネタ作り担当。コンビとして「THE MANZAI」や「M-1 グランプリ」の決勝に残るなど実力派として知られる。2018 年オフィス北野からサンミュージックへ移籍。