噂の萌えロボット TEPIAチャレンジ助成事業2018「モエちゃん」開発秘話

ロボット開発の夢をサポート!
噂の萌えロボット
TEPIAチャレンジ助成事業2018「モエちゃん」開発秘話
長野県立松本工業高校「電子工学部」

すんげぇロボット、つくりたい!でも、知識も経験もないからムリだよね…。いいえ、情熱さえあれば、TEPIAが全力でサポートしちゃう、かも??
「ロボット開発についてまったく自信がなかったのに、欲望を全開にしたらグランプリ、とっちゃいました!」そう語るのは長野県立松本工業高校「電子工学部」の7人。彼らの欲望(?)を探りに、長野までGo!

男子高校生は疲れるんです


萌えロボットの『モエちゃん』、それが昨年のTEPIA チャレンジ助成事業の成果発表大会にてグランプリを受賞したロボット。男子工業高校生の欲…いや、夢が詰まっているのだとか。

「進路や家族のことなど男子高校生は悩みが多くて疲れるんです。なのに、まわりに女の子がいなくて癒しがない。だったら癒してくれるロボットをつくろうと、僕たちの欲…いや夢を詰め込んだのがモエちゃんです!」そう語るのはリーダーの榊原さん。

昨年のテーマは「中高生がワクワクドキドキする課題解決ロボットを開発せよ!」。そこで、みんなで世の中にある課題について話し合いました。しかし…。

「ニュースなどで知った社会問題をたくさん挙げても、どれも所詮は見聞きした話。それでは堂々と課題提起できないと感じ、身近な課題は何かを考え直しました」。その結果、誕生したのがモエちゃんでした。

Pepperくんを超える(?)理想のロボット

モエちゃんは呼ぶとやって来ます。「行ってきます」と話しかければ、かわいい声で「行ってらっしゃいませ、ご主人様♡」と手を振ります。握手をすると握り返し、スケジュールだって教えてくれる。「もう癒されちゃいますよね(´д`)デレデレ」と榊原さん。

制作で一番苦労したのは自然なコミュニケーションをどう表現するか。「声に合わせてタイミングよく動かすのが大変なんです」と話すのは駆動部を担当した瀬戸さんです。「何度も微調整を繰り返しました」。

プログラム担当の塩入さんと武井さんは「僕らの理想が実現できたらpepper を超えちゃう。目指したのはそういうロボットでした」と感慨深げ。

暗闇モエちゃん
暗闇の中のモエちゃん。榊原さんいわく「夢に出てくるんですよね〜♪」とのこと。確かにある意味、夢に出てきそう(汗)

グランプリ目前で事件が多発!

電子工学部は伝統のある人気の部活。榊原さんに入部した理由を訊ねると「雰囲気がゆる〜いからだよね〜」と、なんともゆる〜い回答が。すると、「大型の電動工具が使いこなせるからだろが!」と叱責するのは赤羽さん。赤羽さんは田見さんとともに電動工具を駆使して骨格を組み立てたほか、顔などの造形も手がけました。

「造形なんてしたことがなかったので大変でした。顔の材質はモチモチッ♡とした肌触りを追求し、シリコンにしたのですが、グランプリ1週間前に破けてしまい、急きょ紙粘土でつくり直したんです」

さらにその1週間前にはプログラムが消える事件も勃発。塩入さんはショックで授業を休みそうになったとか、ならなかったとか…。

「ソフトウェアをアップデートした途端、全部のファイルが消えたんです。バックアップも取れてなくて…。徹夜の復旧作業は本当に大変でした」

まったくの無知からのプログラム開発

実は、塩入さんは今回使用したラズベリーパイ(小型コンピュータ)を今まで触ったことがなく、Pythonというプログラミング言語についても開発前はほとんど知識を持ち合わせていませんでした。

TEPIA チャレンジ助成事業では、採択チームに選ばれるとロボット開発費の支援の他、技術的なアドバイスが受けられるようになります。「本当に何もわからない状態でした。TEPIA の方にはプログラムのコードをチェックしてもらったり、『こんな機能を入れたいけど、どうすればいいですか?』と訊ねたりして、その都度、アドバイスをもらいました。おかげで無事に完成させることができました」。

TEPIAチャレンジ助成事業とは?─TEPIAがその一歩を応援します!─
ロボット開発に挑戦したい中高生を開発費の助成と技術サポートでTEPIAが支援します。自身のアイデアからオリジナルロボットを開発し、成果をTEPIAロボットグランプリで発表して評価を受けることができます。
資金や技術の制約から諦めていたロボット開発への参加や、新たな技術の創造にチャレンジしてみませんか?

工業とは違う学びもたくさんありました

成果発表大会ではロボットの実演とともにプレゼンを行います。そして、採択時からどれだけ成長し、どれだけアイデアが実現できたかなどを審査します。昨年の大会では榊原さんたちのチームがグランプリに。その瞬間、誰もが「まさか!」と慌てたのだとか。

ただ、榊原さんは次のように話します。「自分たちがワクワクしながら開発したのがよかったのかもしれません。チームでアイデアを出し合ったり、プレゼンなどを通じて考えを発信したり、工業とは違う学びもたくさんありました。グランプリをとれたことが大きな自信につながったと感じています」。

この春からはそれぞれの道を歩む7人。彼らの背中に向かって、「行ってらっしゃいませ、ご主人様♡」と、きっとモエちゃんは手を振っているに違いない。そして、モエちゃんに見送られる彼らの表情はとっても清々しく、とっても頼もしく見えたのでした。

顧問 三澤実先生
みんなで同じ方向を向いて1つの目標をやり遂げた、その経験は大きかったですね。また、自由な発想でロボット開発ができたことも彼らにとっての成長につながったと思います

文= 阿部 伸/写真= 高永 三津子 text ABE SHIN / photograph TAKANAGA MITSUKO