お笑いコンビ『馬鹿よ貴方は』新道竜巳の「馬鹿よ青春」第2回

第2回「鬼みたいな顔VS○○○な顔」

皆さん修羅場を潜り抜けたことはありますか。僕の高校は千葉の木更津で、暴走族がスポーツ推薦で入ってくるような所でした。僕は、クラス内だけでは強く見られたく、髪型をリーゼントにして偉そうに振舞い、教室を出るとスポーツ推薦の奴らからは隠れるように移動していました。

ある日、スポーツ推薦の1人が僕のクラスに入って来ました。鬼みたいな顔をした奴で、怖くてたまらないので、後ろの同級生に話しかけ、気づいていないフリをすることに。すると手当たり次第に「テレホンカードくんねえ」とカツアゲ状態のことを始めたのです。「すいません、持ってません」とクラスメイトは次々に白旗を振ります。僕の座っている列の前から順番にスポーツ推薦の奴は話しかけていきます。どうしよう…。

「オイ、後ろ向いてる奴」。ついに僕の番です。クラスの視線が集まります。「お前だよ」。ビビったらクラスで強く見られなくなる、どうしよう。「お前だよ」。もうやけくそだ。「あーなんだよ」。

ついにやってしまった。鬼みたいな顔の奴は僕の顔を静かに睨らみます。どうしよう、そもそもガンの飛ばし方がわからない。僕がどんなに怖い顔をしても奴の通常時の顔にすら勝てる気がしない。ゲームショップでソフトを見ているときのような、物欲しそうな顔ならできる。それでいこう。

鬼みたいな顔VSゲームソフトを眺める顔。どのくらい睨み合いは続いただろう、体感は1年ぐらい。奴が「テレホンカード持ってない?」と少し弱い感じで言ってきた。思い切って「ねーよ」「……」。チャイムが鳴り。奴は黙って立ち去った。

まさかのゲームソフトを眺める顔が勝ったのだった。今までにない見られ方なので予測不能すぎて、奴は逃げることにしたのだ。僕はなんとか強いと思われることに成功し、クラスでの立場を死守した。

その後そいつは空手の県大会で優勝しました。殴り合いになっていたらと思うと、怖すぎて今も体が震えます。その年の後半には僕は髪型を戻し、等身大の自分でいることの楽さに気づきました。自分を偽る愚かさを勉強したのでした。

〈秋号 vol.4(2018年10月発行)より〉