おカネのプロがこっそり教える モノづくりティーンズに役立つマネジメント講座 第1回

第1回「職場選びのポイント伝授!元気な会社の見極め方」

モノを作るのって楽しい!作ったモノで人が喜んだり、お金が稼げるともっと楽しい!!
というわけで、創業支援やマネジメントのプロ、第一勧業信用組合の理事長・新田信行先生に経営やお金にまつわる話を聞いてみよう!のコーナーが始まりました^^
このシリーズを読み終えるころ、キミはマネジメントがわかるティーンズになる!…かも?

社会人だってマネジメントのことを知らないよ
某芸能事務所のマネージャーさんの高額(?)なお給料が、少し前に話題になりましたよね。芸能人の仕事を取る営業活動やスケジュール管理をする人をマネージャーと呼びます。いっぽう、学校の部活にもマネージャーがいるし、会社でマネジメントを行う人もマネージャー。

実は、マネジメントやマネージャーという言葉はいろんな場面で使われていて、社会人でもその意味を正しく答えられる人は少ないんです。なので、まずはマネジメントなんて深く考えなくてOK。そんなことより、就職先を選ぶ際に役立つ話を聞きたくありませんか?

会社の力を見抜くプロ
お話をうかがうのは、元みずほ銀行の常務執行役員で、現在、第一勧業信用組合(以下、第一勧信)の理事長・新田信行さん。第一勧信では新田さんが理事長になって以来、「会社を始めたい!」「こんなビジネスをやりたい!」という若者や女性を積極的に応援し、この2年間でこれから創業する会社や創業間もない会社250社以上に対して、貸し出し(=融資)をしてきました。これって、大手銀行もマネできない、ものすごい数字なんです。

でもでも、当然ですが、誰にでもお金を貸すわけではありません。その会社の能力や事業の計画性を見極め、「この会社なら大丈夫!」という確信が必要です。ですから、どの金融機関よりも創業支援に力を入れる第一勧信は、会社の力を見抜く、まさに「目利き」のプロなのです。

皆さんも職場見学などの際に、その会社を「目利き」できたら、就職先を選ぶときの判断材料になること間違いありません!

元気な会社の見分け方
では、さっそくうかがいましょう。新田先生! 将来性のある会社とそうじゃない会社って、どうやって見分けるの?

「モノづくり企業、特に中小企業は何だかんだいっても社長さんですね。未来に向けて夢を語れる社長さんがいる会社は元気がいいし、将来性もあります」

夢を語れない社長さんがいるんですか?

「昔話ばかりしたり、不平ばかり言っている社長さんは、やっぱりよくないですよね。世の中が厳しくても『こういうことをやりたい!』と社長さんが前向きに夢を語れると、お客さんの獲得や従業員の仕事へのモチベーションにもつながります」

なるほど。ほかにも、将来性のある会社の社長さんって、何か特徴がありますか?

経営能力は、ほとんどが決断力と行動力で決まるんです。事業がうまく進まなくても、決断して行動する社長さんは立て直しが早いものです。そして、そういう社長さんはいろんな人とどんどん交流をします。事業は一人ではできないので、そういう<人とつながる力>を持った社長さんが経営する会社はだいたいうまくいきますよ」

工場見学が大切なのです
新田さんは日ごろから職員に対して「工場見学に行け!」と言っているそうです。でも、金融機関が工場見学をするのって、珍しいんです。

多くの金融機関は工場見学をせず、「決算書」や「担保」(これらの単語も難しいので、今は覚えなくてOK)を主な判断材料にして、貸し出しをするのですが、起業したい若者が担保なんて持っていることは、まずありません。

「私たちは書類を見ただけではわからない社長さんの人柄や実際の仕事内容を評価するようにしています。だから、工場見学が大切になります」

工場では何を見るの?
工場見学をする際にはどんなところを見るのでしょうか?

「例えば、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の5S。5Sがしっかりしていないと、従業員がケガをしたり、作業効率も悪くなったりします。5Sに気をつけ、従業員が明るく健康でいられる職場環境を作る努力をしている会社は、人を大事にする会社です。今の時代、人を大事にしない会社は業績も伸びません

ほかにも、新しい機械を使っているか。古い場合でもきちんとメンテナンスをしているか。若い従業員に技術を伝える教育制度があるか。在庫を管理する体制がしっかり整っているかなどを見るそうです。

もちろん、生産方式や独自技術の保護の仕方といった、ちょっと小難しいこともチェックするそうですが、皆さんが職場見学をする際には、5Sなどを気にしながら、その会社を<目利き>してみてはいかがでしょうか。

あ、でも、皆さんは高校生なので、あからさまに「目利きしてやろう( ¬д¬。)」みたいな態度だと、印象が悪くなるのでご注意を(笑)

さて、次回は新田さんが実際に出会った元気な社長さんのお話から、マネジメントとは何か? みたいなところにも触れていきたいと思います。お楽しみに!


工場見学をする新田先生。第一勧信では理事長自ら、さまざまな会社に足を運びます
写真提供=第一勧業信用組合

講師=第一勧業信用組合理事長・新田信行せんせい
1956年千葉県生まれ。1981年に第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行の常務執行役員を経て、2013年、第一勧業信用組合の理事長に就任。

<お問い合わせ先>
第一勧業信用組合〈本店〉
東京都新宿区四谷2-13
TEL:03-3358-0811
http://www.daiichikanshin.com/

文= 阿部 伸/写真= 高永 三津子
text ABE SHIN / photograph TAKANAGA MITSUKO