ものづくりの神髄 教えてください!【後編】

技術でみんなを喜ばせる人になって欲しい
モノづくりとは、人を驚かせ、喜ばせることだと思います。工業高校生のみなさんには、その驚きや喜びの声を実感できる仕事を選んで欲しいですね。大企業もいいけれど、小さな町工場に就職したって、独立して町の自転車屋さんを営んだっていいんです。腕を磨く、技術を極める、そしてお客さまに喜んでもらう。そういう道を目指して欲しいな。手に職を持った人は、社会に出たときに強いですから。「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、若いうちから技術を磨くことはとても大切だと思います。

一番大切なのは、出会いのための努力
私は幸運にも、有名な番組をいくつも手がけた名ディレクターさんと出会えました。そして、工作のアイデアを考えてくださったのは、造形作家のヒダオサム先生です。そういう素晴らしい出会いがあったからこそ、今の自分があるんだと思っています。

みなさんも、社会に出たらいろいろな人と付き合うことになります。その中に、あなたのことを認めてくれる人が絶対にいるはずです。でも、ただ待っているだけではダメ。出会いは偶然ではありません。自分を認めてもらえる人に巡り合うための努力が必要です。だからこそ、未知の分野にもどんどん突っ込んでいく経験をたくさんしてください。


ハサミで切った紙を折って、重ねて、ホッチキスで留めて…。顔を描いたら、舌をチョロチョロ出すヘビの工作のできあがり〜! こういう動きのある工作こそ、久保田さんの真骨頂。見事な手さばきと豊富なアイデアは、まさに職人技

一生涯「工作の伝道師」でありたい
今は働くことが楽しくて楽しくて(笑)。もちろん、イベントの準備は大変です。でも、苦労があるからこそ楽しみがある。工作を披露したときの「おお〜!」という歓声、子どもたちの笑い声。これは仕事をしていて、何ものにも代えがたい喜びですね。

だから「工作の伝道師」の仕事は生涯続けていきたいと思っています。子どもたちとの出会いは一期一会。モノづくりの大切さを伝えるため、きっちり準備をして、本番にのぞむ。それを一生続けられたら「俺の人生はよかったな」と言えるかもしれませんね。でも、まだまだ自分の工作に納得はしていません。本当に伝えたいことを与えられた時間内でやりきるのは、何年やっていても難しいものです。

人間は死ぬまで勉強。高校生のキミたちは、これからもっといろいろな人と出会って勉強して欲しいな。人生、絶対にあきらめちゃダメ。まだまだこれからだよ!


工作アイデア:ヒダオサム

久保田 雅人(くぼた・まさと)
1961年東京生まれ。大学在学中に中学・高校の社会科教員免許を取得するも役者の道へ。1989年より23年間、NHK教育テレビの工作番組『つくってあそぼ』に「わくわくさん」役として出演。番組終了後も全国各地で工作イベント活動を続け、子どもたちの人気を集めている。

〈創刊号(2017年10月発行)特集インタビューより〉

取材・文= 小泉 真治/写真= 高永 三津子/撮影協力=studio shake
text KOIZUMI SHINJI / photograph TAKANAGA MITSUKO / cooperation with photography STUDIO SHAKE

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